SpaceX IPO——史上最大の上場が始まった
2026年6月12日、SpaceX(ティッカー:SPCX)がNASDAQに上場しました。公募価格$135、時価総額1.77兆ドル、調達額750億ドル——全てが史上最大のIPOです。サウジアラムコの記録(294億ドル)を2.5倍以上更新しました。
IPO前には「$135は高すぎる」「公募割れする」という声が一部のアナリストから上がっていましたが、結果はどうだったのか。そして今後、投資家が本当に警戒すべき「急騰→急落」の乱高下シナリオとは何か。最新の需給環境とロックアップスケジュールを踏まえて徹底解説します。
「公募割れする」は完全にナンセンスだった
応募殺到——最終倍率は3.5〜4倍に到達
Bloombergの最終報道によると、SpaceX IPOの需要は当初の2倍オーバーサブスクリプションからさらに膨らみ、最終的に3.5〜4倍に達しました。申込総額は2,500億ドル超——調達目標750億ドルの3倍以上の資金が殺到したのです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 調達目標 | 750億ドル |
| 最終申込総額 | 2,500億ドル超 |
| オーバーサブスクリプション倍率 | 3.5〜4倍 |
| 機関投資家の大口注文(100億ドル超) | 複数社 |
| リテール枠 | 全体の30%(通常の3倍) |
SBI証券で落選報告が続出
日本国内でもSpaceX IPOの人気は凄まじいものでした。SBI証券の抽選結果が6月11日夜に発表されると、SNS上には「落選」報告が殺到。Yahoo!ファイナンスの掲示板やX(旧Twitter)では「SBI落選」「ハイパー預金に入れていたのに当たらなかった」「楽天も全滅」といった声が相次ぎました。
ダイヤモンドZAiの分析では、SBI証券のリテール枠に対する申込倍率は推定10倍以上とされており、「応募すれば当たる」という甘い状況では全くなかったのです。
なぜ「公募割れ論」がナンセンスだったのか
Morningstarが「適正価値は$63」と主張し、一部メディアが「だから公募割れする」と煽っていましたが、この論調は以下の理由で完全に的外れでした。
- 3.5〜4倍の超過需要:$135で「買いたくても買えなかった人」が申込者の7割以上。この人々が初日にセカンダリーで殺到する
- フロートわずか4%:時価総額1.77兆ドルに対し750億ドル分しか流通しない。究極の品薄
- 既存株主はロックアップ:マスクもVCも初日に1株も売れない。売り手が物理的にいない
- 100%新株発行:「内部者が高値で逃げる」構図ではなく、全て会社の成長資金
- NASDAQ-100組み入れ:上場後15日でインデックスファンドが$220〜270億の強制買い
「バリュエーションが割高」と「初値で公募割れする」は全く別の命題です。前者は長期的な企業価値の議論であり、後者は短期の需給バランスの問題。需給が極端に絞られた状態で公募割れが起きるメカニズムは存在しません。
しかし、本当のリスクはここから——「急騰後の急落」シナリオ
IPOの3つのフェーズ
SpaceX株の値動きは、今後3つのフェーズを経ると予想されます。
| フェーズ | 期間 | 予想される動き | 主な要因 |
|---|---|---|---|
| ①初値急騰 | 上場初日〜1週間 | $135から大幅上昇 | 超過需要、品薄、インデックス先取り買い |
| ②乱高下・調整 | 2週間〜3ヶ月 | 急落→反発を繰り返す | 利確売り、ロックアップ解除の「影」 |
| ③本格調整 | Q2決算後〜年末 | 下落圧力が強まる | 既存株主の段階的売却が実際に始まる |
フェーズ①:初値急騰の構造
上場初日の急騰は、以下の構造的要因で起こります。
- 「買えなかった組」のセカンダリー参入:申込者の7割以上が落選しており、初日に市場で購入を試みる
- 4%フロートの品薄効果:少ない供給に大量の需要が殺到し、価格が吊り上がる
- インデックスファンドのフロントランニング:NASDAQ-100組み入れ(上場15日後)を先取りしたトレーダーの買い
- リテール投資家の「記念買い」:SpaceXという企業のブランド力が、通常のIPO以上の個人需要を生む
TradingKeyの分析では、初週の予想レンジは$140〜$175。しかし4%フロートの極端な品薄環境では、これを大きく超える可能性もあります。
フェーズ②:ロックアップ解除「前」の急落リスク
最も重要なポイント:急落は「ロックアップ解除日」ではなく「解除の数日〜数週間前」に起きる。
これはIPO市場でよく見られるパターンです。市場参加者はロックアップ解除日を事前に知っているため、「解除日に大量の売りが出る」ことを先読みして、その前に売り逃げる動きが発生します。
SpaceXのロックアップ解除スケジュール
| タイミング | 解除内容 | 推定日 | リスク |
|---|---|---|---|
| Q2決算発表後 | 既存株主の保有株20%を売却可能 | 7月下旬〜8月 | ★★★★★ 最大 |
| IPO後70日 | 追加で7%売却可能 | 8月下旬 | ★★★ |
| IPO後90日 | 追加で7%売却可能 | 9月中旬 | ★★★ |
| IPO後105日 | 追加で7%売却可能 | 9月下旬 | ★★☆ |
| IPO後120日 | 追加で7%売却可能 | 10月中旬 | ★★☆ |
| IPO後135日 | 追加で7%売却可能 | 10月下旬 | ★★☆ |
最大のリスクイベントはQ2決算発表後です。この時点で既存株主は保有株の20%を一気に売却可能になります。初期投資家(セコイア、Founders Fund、Google等)にとって、SpaceXは数十倍〜数百倍のリターンを生んでいる投資であり、一部利確の誘惑は極めて大きいです。
なぜ「解除前」に急落するのか
- 先回り売り:「7月末にロックアップが解除される → その前に売っておこう」という心理が、解除の1〜2週間前から売り圧力を生む
- 空売りの増加:ヘッジファンドがロックアップ解除日を狙って空売りポジションを構築する
- センチメントの悪化:「解除後に大量売りが出る」という報道が増え、個人投資家が不安売り
- オプション市場の変動:ロックアップ解除日を意識したプットオプション需要が高まり、IV(インプライドボラティリティ)が上昇
フェーズ③:本格調整——7月以降の売り圧力
Q2決算後に既存株主が20%を売れるようになると、流通株数が一気に増加します。
- IPO時のフロート:約750億ドル(時価総額の4%)
- Q2決算後のフロート:約3,500億ドル超(時価総額の20%以上)
供給が5倍近くに膨らむことで、需給バランスが根本的に変わります。さらに9〜10月にかけて7%ずつ段階的に解除が続くため、「常に次の売りが控えている」状態が年末まで続きます。
乱高下シナリオ——具体的な株価イメージ
| 時期 | 予想レンジ | 主な材料 |
|---|---|---|
| 6月12日(初日) | $150〜$250 | 超過需要の爆発、品薄効果 |
| 6月第3〜4週 | $170〜$300 | インデックス組み入れ($70億の強制買い) |
| 7月前半 | $160〜$250 | ロックアップ解除を意識した先回り売り開始 |
| 7月下旬〜8月(Q2決算後) | $120〜$200 | 既存株主20%売却開始。最大の調整局面 |
| 9〜10月 | $100〜$180 | 段階的ロックアップ解除が続く+Anthropic/OpenAI IPOに資金流出 |
※あくまで構造的要因に基づく予測レンジであり、業績やマクロ環境で大きく変動します。
9〜10月のさらなるリスク——Anthropic・OpenAI IPOによる資金分散
2026年後半のIPOスケジュール
SpaceXだけでなく、2026年後半にはAnthropic(10月予定)とOpenAI(9月予定)という巨大AI IPOが控えています。
| 企業 | 上場時期(予定) | 想定バリュエーション | ステータス |
|---|---|---|---|
| SpaceX | 2026年6月12日 | 1.77兆ドル | 上場済み |
| OpenAI | 2026年9月(予定) | 8,520億〜1兆ドル | 機密S-1提出済み(6/8) |
| Anthropic | 2026年10月(予定) | 9,650億ドル | 機密S-1提出済み(6/1) |
CNNは「OpenAIとAnthropicが間もなく試練を受ける」と報じ、CNBCはPerplexity CEOが「2028年にIPOする」と発言したことを伝えるなど、AI企業のIPOラッシュは今後も続きます。
SpaceX株からの資金流出リスク
OpenAI(9月)とAnthropic(10月)のIPOが近づくと、投資家は「新しいIPOの申込資金を確保するために、既存の保有株を売る」動きに出ます。SpaceXは上場から3〜4ヶ月経過し、ちょうどロックアップ解除が進む時期と重なるため、「売り圧力+資金流出」のダブルパンチを受ける可能性があります。
特にリスクオン志向の個人投資家は、SpaceXの含み益を利確して「次のIPO」に乗り換える可能性が高く、9〜10月はSpaceX株にとって最も苦しい期間になるかもしれません。
投資家が取るべき戦略——タイムフレーム別
短期トレーダー(数日〜数週間)
- 初値で配分を得られた場合:初週の急騰局面で一部利確が合理的。全量ホールドは欲張りすぎ
- セカンダリーで購入する場合:初日の高値掴みに注意。「$200で買って$150に落ちる」パターンは十分あり得る
- 7月前半が利確の最終ライン:Q2決算前に一度ポジションを軽くするのが安全策
中期投資家(3〜6ヶ月)
- 7〜10月の調整局面を待って購入が最も効率的。ロックアップ解除+AI IPOラッシュで一時的に株価が沈む可能性
- Morningstarの$63まで下がるかは疑問だが、$100〜$120レベルまでの調整は想定内
長期投資家(1年以上)
- Starlinkの契約者数増加と黒字化が鍵。2027年のStarlink単体IPOの噂もあり、長期ではさらなる上昇余地
- ロックアップ完全解除後(2027年初)に需給が安定してからの購入が最もリスクが低い
SBI証券で落選した人はどうすべきか
焦って初日に高値で買わない
IPOに落選したことで「出遅れた」と感じるかもしれませんが、初日の高値で焦って買うのは最悪の選択肢です。上述の通り、7月以降に調整局面が来る可能性が高いため、「待つ」ことが最善の戦略になり得ます。
次のIPOに備える
SpaceXに落選した資金は、OpenAI(9月予定)やAnthropic(10月予定)のIPOに充てることもできます。これらのAI企業も同様に超大型IPOとなる見込みであり、SpaceXと同等以上の初値上昇が期待されています。
ただし、OpenAIとAnthropicのIPO日程はまだ正式確定しておらず、スケジュールの変更や延期の可能性もあります。最新の情報を常に追いかけることが重要です。
Anthropic・OpenAI IPOの最新スケジュール
| 企業 | S-1提出 | 上場予定 | 主幹事 | バリュエーション |
|---|---|---|---|---|
| OpenAI | 6月8日(機密) | 9月〜Q4 | Goldman Sachs / Morgan Stanley | 8,520億〜1兆ドル |
| Anthropic | 6月1日(機密) | 10月(予定) | 未確定 | 9,650億ドル |
両社ともS-1は機密扱いで提出済みですが、正式な上場日は未確定です。SECのレビュー期間、ロードショーの日程、市場環境によって前後する可能性が高いため、確定情報が出次第すぐに動けるよう準備しておく必要があります。
まとめ:SpaceX IPOの「本当のリスク」を理解する
- 「公募割れ」は起きなかった——3.5〜4倍の超過需要、4%フロート、ロックアップで売り手不在。構造的に公募割れは不可能だった
- SBI証券では大量の落選者が発生——推定10倍以上の倍率。「応募すれば当たる」は幻想だった
- 初値急騰の後に乱高下が来る——7月のQ2決算後ロックアップ解除(20%)が最大のリスクイベント
- ロックアップ「前」に急落する——市場は解除日を先読みして事前に売り逃げる。7月前半から要注意
- 9〜10月にAnthropic・OpenAI IPO——SpaceXから新IPOへの資金流出リスク。ロックアップ解除と重なり「ダブルパンチ」
- 長期ではStarlinkの成長次第——短期の乱高下を乗り越えた先に真の投資機会がある
SpaceXのロックアップ解除日、OpenAI・AnthropicのIPO正式日程——これらの「日付」が株価を動かす最大の要因です。正確なスケジュールを把握し、最適なタイミングで動くために、IPO Tracker & Alertを活用しましょう。
※本記事は2026年6月12日時点の情報に基づいています。株価は市場環境や需給バランスにより大きく変動します。OpenAI・AnthropicのIPO日程は未確定であり、延期・変更の可能性があります。投資判断は自己責任でお願いいたします。



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